この絵本の主人公も、いやだいやだの「やだもん」、いたずらっこの「たずら」、く
いしんぼうの「もぐもぐ」、あいであまんの「ぴかっと」、わすれんぼうの「ぽっ
け」、しりたがりやの「なあに」、こわがりの「ぶるる」、ちらかしやの「ぽいっ
と」、わらいんぼうの「げらら」、いつもしんせつな「はっぴ」、がんばりやの
「がんがん」、まねっこの「まねりん」の12人です。
とりわけ幼児期の子どもたちが日常で表現する個性を、時にユーモラスに、またハラ
ハラするような場面を盛り込んだストーリィとして読ませてくれます。幼児期だけで
はなく、普遍的に人間の持つ個性を見せてくれる絵本なのかもしれません。ですから
大人も、『こんなこいるかな』は、自分の「内なる子ども」を見る思いで、主人公に
共感したりおもしろがったりできるのではないでしょうか。
表紙絵には、12人の主人公と小ネコの「みゃー」、小イヌの「ぺろ」の登場人物が
勢ぞろいして、読み手の楽しい期待を高めてくれます。
ある時私は、一人で外出するのに『こんなこいるかな おでかけえほん』をカバンに入
れて電車に乗り、「ぴかっと」のページを読みました。「ぴかっと」はアイデアマン
です。
「ぴかっと」、「ぺろ」、「みゃー」がお店やさんごっこをするお話でした。「ぴ
かっと」の本屋さんに、ぺろとみゃーが絵本を買いに行きます。最初はお客として、
お花の絵本や自動車の絵本を買ったのです。ところが、二人とも人気のおばけの絵本
がほしくて、取り合いになってしまいました。そのうえ一冊の絵本を引っ張りっこし
たので、破けてしまったのです。
すると、「ぺろ」と「みゃー」は、「おばけの絵本、見たかったよー」と、泣き出し
ました。その時、「ぴかっと」がいいことを思いついたのです。そして彼は、箱には
さみを入れ、ちゃんと二人で絵が見られる、ある、すてきなものを工夫して作り上げ
ました。
普段、中立的な登場人物の「ぺろ」と「みゃー」がけんかをするのは、珍しいことで
すが、「ぴかっと」のアイデアを光らせるために、ふたりの仲たがいが必要だったの
でしょう。
さて、ある知り合いのお宅の夫婦喧嘩の話です。奥様はウツ状態が長く続き、1年
以上休職していました。最近、ようやく少しずつ仕事に復帰できるようになったそ
うです。
ある日曜日のこと、奥様と10歳の息子さんとの会話をそばで聞いていたご主人が、
奥様に、「いつも、そういう言い方をするから、だめなんだよ!話の進め方がよくな
い。こう話せば、もっとわかりやすくなる」と助言したそうです。
親切な教えのつもりだったのでしょう。
ところが、そのアドバイスの仕方が、モラハラっぽかったので、彼女は人格を否定さ
れたように感じたそうです。そして、思わず感情的になり、「そんなに馬鹿にした言
い方するなら、もう、家を出ていくからね!」と言ったところ、ご主人から、「出て
いけ!」と言われてしまいました。売り言葉に買い言葉です。
すると、小学4年生の息子さんが、貯金の入っている自分の財布を母親に渡し、
「これ、持って行って!」と言ったそうです。そのあと、「でも、家のことする人が
いなくなると困るから、出ていかないで!」と発言したそうです。結局、お母さま
は、家にとどまりました。
私は、その話を聞いて息子さんの気持ちを思い、涙が出そうでした。もう、4年生な
ので、「ママ、出ていかないで!」と泣いたりはできなかったでしょう。ですから、
勇気を出して両親の喧嘩に割って入り、自分にできる精一杯のことをし、精一杯の発
言をしたのだと思います。
私には息子さんが、家族関係調整の「ぴかっと」役を買ってでたように、思えました。
喧嘩をしないに越したことはないし、譲歩するとか、相手の言葉に学べる柔軟性やゆ
とりがあれば、喧嘩にならずに済むのでしょうが、時と場合によります。
「ぴかっと」のひらめきには、危機的状況や困ったことが起きた時、いつも心和む工
夫と解決策があるので、読み聞かせするおとなにとっても、次の一手がほっこりと
感じられるでしょう。
『こんなこいるかな』は、子どもの個性と心理を衝いていますし、読み終わった後、
いつだって、どんな時だって、“何とかなるさ!”という安心感がもらえる絵本です。
だからこそ“おでかけえほん”としても、ふさわしいのではないでしょうか。
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筆者、体調不良のため、7月・8月は夏休みをいただきたいと思います。
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